皆さん自身やお子さんは「ヤバい」という言葉を使いますか?
「ヤバい」という言葉の裏には子供の語彙力に大きく影響するヤバさが潜んでいます…
今回は「ヤバい」という言葉から見る現代の語彙力の現状や、子どもの語彙力を鍛える方法をご紹介します。
目次
「ヤバい」に潜む子どもの語彙力のヤバさ
「ヤバい」とは?
「ヤバい」とは、本来、「危険」「不都合」など良くない場合に使われる言葉でした。語源は様々な説がありますが、有力なものでは江戸時代の犯罪者の間で使われた隠語が語源になったというものです。
江戸時代に犯罪者が投獄される牢屋を「厄場(やくば)」と呼び、犯罪者の間で「捕まりそう」な悪い状況を「やば」というようになりました。そこから好ましくない状況を形容詞の「~い」の形で呼ばれるようになったというのです。
他には、江戸時代の射的場を表す「矢場(やば)」から来たという説もあります。矢場は治安の悪い場所にあったため、矢場に近づくと良くないことが起こるという意味で、良くない出来事を指す言葉として「やば」というようになったという説もあります。
1988年版の「現代用語の基礎知識」の中に「やばい」は「危ない」の意味として収録され、2006年改訂の「大辞林」には「危ない」という意味に加えて「すごい・自身の心情がひどく揺さぶられている様子」という若者言葉としての意味が追加されています。
「ヤバい」の現代の使われ方は?
現代では「ヤバい」という言葉は「危ない」という意味だけでなく、非常に多様な意味でつかわれています。
・あやしい
・びっくりした
・おもしろい
・たのしい
・おいしい
・感動した
・緊張した
・意味が分からない
・きれい
・かっこいい
・かっこわるい
・うまくいった
・まずい
・体調が悪い
・追い詰められている
・強い など
現代では良い意味、悪い意味両方で「ヤバい」は広く使用され、
「あの人ヤバい」
「このケーキヤバい」
など同じ「ヤバい」でもその時の状況や表情、言い方で相手が判断して会話が進みます。
「ヤバい」に潜むやばさ
前述の通り「ヤバい」は様々なシチュエーションでその時の状況や感情を表現するのに使用できます。しかしながら、他に言い換えられる言葉が多数あるにもかかわらず、全ての感情や表現を「ヤバい」で済ませてしまうのは、子どもたちの語彙力の発達に非常に危険です。
「ヤバい」という言葉は、身近な友人などの間で使う言葉で、敬語やビジネスシーンなどの場では不適切です。日ごろから「ヤバい」を連発していると、大切なところでふさわしい表現が出てこず、表現の乏しい人という印象になりかねません。
また、多くの言葉を「ヤバい」に置き換えて会話を続けることで、お子さんの読解力や表現力にも大きな影響が出てきます。
子どもの「ヤバい」にどう対応する?
お子さんが「ヤバい」が口癖になっている時は、どのように対応すればいいでしょう?
お母さん!今日の給食ヤバかった!
お子さんが笑顔でこんな風に言って来たらどのように思うでしょうか?
『おいしかったのかな?』
『すごいメニューが出たのかな?』
『好物が出たのかな?』
など様々な事が考えられます。
「そうだったんだ~よかったね~」とそのままを察して受け取るのではなく、「どんな風だったの?」とその先の「ヤバい」と思った理由を別の言葉で引き出しましょう。
「ヤバい」という言葉は前後の表現や表情でなんとなく意味が察しやすいので、そのまま受け取ってしまいがちですが、違う表現で詳しい内容を聞き出して会話を広げましょう。
お子さんが自分の興奮具合を「ヤバい!」と表現すること自体が問題なのではなく、他の表現を使わずに済んでしまうことが問題です。「とにかくヤバかった」などと言っても何も伝わらないため、違う表現を使いながら語彙力を育てていくことが重要です。
子どもの語彙力は読解力や表現力の土台
「ヤバい」などの広く使える便利な言葉によって、色々な言葉を使ったり覚えたりしなくても済むようになってしまうと、日本語の多彩な表現方法を身につけられないだけでなく、本や資料などを読んだときに言葉を知らないことでその内容を理解できないことに繋がってしまいます。
語彙力は、国語だけで役に立つものではなく、算数や社会、理科など様々な教科の問題を解くときにも必要になり、さらに社会に出てからも仕事上の資料や日常生活の中での手続きなどにも必要になってくる力です。
人の話を理解するときや、わからない人に説明するときなど、語彙力があれば他の表現に言い換えたり、相手に合わせて言葉選びをすることが可能です。
小さなうちから様々な言葉や表現を使用して親子や友人と会話をすることは、語彙力の発達を助けます。
子どもの語彙力を鍛える方法
それでは、子どもの語彙力を鍛えるにはどうすればいいのでしょうか?
小説や図鑑・新聞など様々な文章を読む
普段身近にある文章の中に、まだ初めて見る言葉やまだ意味を知らない言葉、様々な場面で使える言葉などがたくさんあります。本を読む習慣のないお子さんは、絵本など身近にある物ならなんでも良いでしょう。様々な文章を読むことで自然と語彙力が鍛えられます。
特定の分野の本に偏りすぎると、そこで使われる言語には詳しくなりますが、新たな言葉に出会える機会が減ってしまいます。普段読むものとは分野の本に触れることで新たな表現や言葉が出てくるため、意識して普段読まない本にもチャレンジしてみましょう。
親子の会話を増やす
親子での会話を増やすことは、一番手軽に手早く語彙力を鍛える方法です。お子さんの話を広げたり、自分の体験などを話すことでコミュニケーションの中から新たな言葉に出会うチャンスが広がります。
多様な人との会話をする
身近な人とは同じような話題や言葉を使うことが多く、自分とは異なる世代や価値観を持っている人との会話は新たな世界が広がるきっかけにもなります。相手の使う表現や言葉など、新たな言葉に触れることで刺激になり語彙力や表現力が鍛えられます。
アウトプットをする
日記など、日常にあったことや感じたことをアウトプットすることで、表現力や語彙力が鍛えられます。簡単な日記を書いて親に見せる、SNSで日常を発信してみるなど、他の人に見られるということが正しい言葉遣いや表現方法を意識することにも繋がります。
言葉をつかったゲームをする
しりとり、なぞなぞなど言葉を使ったゲームを親子でしてみましょう。新たな言葉を楽しく覚えられる方法です。ゲームに勝つために言葉を探そうとするため、様々な言葉に意識的に触れる姿勢が身に付きます。
子どもの語彙力を鍛えるおすすめ本
子どもの語彙力を鍛えるのにおすすめの本をピックアップ!
「伝える力」が伸びる! 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑
「感情を表現する言葉」に焦点を絞って語彙をあつめて分類。
齋藤先生のわかりやすい解説とイラストで、「こういうときはこんな表現が使えるんだ! 」と楽しく自然と語彙力が身につく1冊です。
小学生の語彙力アップ 基礎練習ドリル1200 新装版 どんな子も言葉力が伸びる! (まなぶっく)
ふだんの暮らしの中でよく耳にする言葉、本や新聞などでよく目にする言葉を1200も収録!この本を一冊しっかり勉強することで、『語彙力』は大いに向上することでしょう。
ただ、言葉とその意味をおぼえるだけでは、実際に言葉は身につきません。言葉を例文に当てはめるという形式で問題を作成していますので、「言葉+意味+使い方」のセットでしっかりと学習することができます。
小学生の語彙力アップ おもしろ回文レッスン 楽しみながら広がる言葉の世界
上から読んでも下から読んでも同じ言葉になる「回文」は、言葉を組み合わせるパズル遊び!創造力や表現力、語彙力をアップし、脳トレにもなる一冊です。
子どもの語彙力をアップまとめ
「ヤバい」に代表されるように、便利な言葉や様々な場面で使いやすい言葉は子どもたちの語彙力や表現力低下に繋がります。
その言葉自体が悪なのではなく、場面や状況に応じて様々な表現方法を使えるようにトレーニングをすることで、語彙力だけでなく理解力や表現力アップにも繋がります。
言葉は使わないといざという時に使いこなせなかったり、忘れたり、新たな言葉を獲得するチャンスも失われます。
日常生活や家庭の中でお子さんの語彙力を育てていけるように意識していきましょう。