「過保護」と「過干渉」の違いって知っていますか?一昔前までは「過保護な親」が問題になっていましたが、最近では「過干渉な親」が問題になっています。
いつまでも子どもの事が心配で、子どもについつい口出しをしてしまう、心配で仕方ない…これって過干渉?
子供とのかかわり方で「過保護」と「過干渉」はどう違う?その違いや子供への悪影響について解説していきます。
目次
「過保護」「過干渉」とは
「過保護」「過干渉」とは本来どのような意味なのでしょうか?
「過保護」とは
過保護とはある対象を過剰に保護することを指し、特に子どもの養育において必要以上に保護や甘やかしを行うことを言います。つまり、子どもが望んでいることをやってあげすぎる・与えすぎることです。
「過干渉」とは
過干渉とは、ある対象に対して、必要以上に干渉することを指します。親子間においては、保護者が子どもの意思や思考などを無視・否定し、親が望む能力や思考を持つ子供に育てようとすることを言います。つまり、子どもが望んでいないことまで先回りしてやりすぎる・親の理想通りに育てようとすることです。
「過保護」と「過干渉」のちがいとは?
子どもに何かをやってあげようとするという点では「過保護」と「過干渉」は同じように見えますが、全く違うものです。
「過保護」は、子どもが何かが欲しい・したいという主張に対して、甘やかしてしまう状態の事を指します。そのため、「子供を甘やかしている」と思われることもあるでしょう。しかし、児童青年精神医学を専門とした精神科医の故・佐々木正美氏によると「過保護は自立の芽を育て過干渉は自立の芽を摘む」と断言しています。親が子どもの要求を聞き入れ、応えることで子どもの目標が達成されやすくなり満足感から自然に自立へと向かっていくという側面を持つため、過保護は必ずしも悪いものではないのです。
一方で、「過干渉」は親の理想や意見を押し付けてしまうため、子どもの主張が無視されることが頻繁に起こります。子どもが望まないにも関わらず、親の想いだけでやりすぎてしまうことで、子どもはストレスを抱えやすくなってしまいます。過干渉の親の行動には、「子どものため」と思い込んでしまうことで、過干渉なことに気づきにくくなってしまうという特徴があります。過干渉な親の心の奥には、「自分の思い描く理想の子どもに育てたい」という願望があるため、これが子どもへの悪影響に繋がってしまうのです。
過保護…子どもが望んでいることを親が叶えすぎること。子どもの意見を受け入れすぎること。
過干渉…子どもが望んでいないことをやりすぎること。親の意見を押し付けすぎること。
「過保護」と「過干渉」は紙一重?
子どもがまだ小さく、親に対して「見ていてほしい・やってほしい」と考えているのであれば、それをやってあげることは過保護になるでしょう。しかし、これが子どもが自分でできる年齢にも関わらず親の監視や先回りを望む子どもは、親の過干渉によって意識がコントロールされている可能性があります。
過干渉によって親の理想の姿にコントロールされている場合、自分の意思で決定することができず自立が遅れる場合があります。過保護のつもりが、いつの間にか子どもができる年齢にも関わらず先回りをしすぎて過干渉になってしまっているケースもあるのです。
「過保護」は悪いことではない
「過保護にされた子供は将来自分で何もできなくなる」という良くない印象があるかもしれません。しかしながら、子どもは自分の望んでいることをしてもらうことで、満足感を得られ安心できるため、自分からどんどん自立の道へ進んでいくものと言われています。
寂しい気持ちや甘えたい気持ちを満足することで、安心して次のステップへ進めるようになるのです。
離れようとしている子どもに手を出すのが「過干渉」
自分でできるようになっているのに、口出しや手を出してしまうのが「過干渉」です。もし、自分でできるようになって離れていった子供が「見ていてほしい・やってほしい」と望んだときは不安や助けを求めているサインかもしれません。その時は子どもが安心できるように話を聞いて手助けをしてあげましょう。
望んでいないのに手を出したり意見を押し付けるのは子どもの自立の芽を摘んでしまうことに繋がります。
「過干渉」な親の特徴
過干渉な親の特徴を見ていきましょう。
子どもが選んだことを尊重しない
過干渉な親は、自分の理想を押し付ける傾向にあります。「子供にはこんな進路に進んでほしい」「こんな人生を歩んでほしい」という想いは親には誰しもありますし、アドバイスすることや心配することもあるでしょう。過干渉な親の場合は、子どもが「こうしたい、こんな学校に行きたい」という希望や意見を聞き入れずに親の希望を押し付けてしまう特徴があります。また、日常的に子どもが服を選ぶなどの小さな選択にも口出しをする傾向にあります。
子どもが望んでいないのに送迎などをする
習い事や学校の行き帰りなど、子どもが望んでいないのに送迎することで、子どもが友達と過ごす時間を邪魔している可能性があります。夜暗くて危険、一緒に通える子がいないなどの理由がなく子どもも望んでいないのに親の判断で送迎をすることは過干渉と言えます。
子どもが嫌がる習い事を無理やりさせる
「将来に役立つから」「こんな風になってほしいから」という親の強い願望で続けさせている習い事は子どものストレスになってしまいます。子どもの意思や希望を無視して続けさせることで子どもの個性や能力を潰してしまうことにも繋がりかねないため注意が必要です。
子どもの交友関係に口を出す
「〇〇ちゃんとは遊ばないで」など、子どもの交友関係に口出しをするのは過干渉です。子どもは色んな子と接し、くっついたり離れたりを繰り返しながらいずれ自分に合うお友達を見つけます。その際に、様々な環境で育った子と接することで自分で学んでいくのです。
問題ばかりを指摘して褒めない
子どもを褒めるよりも叱ることが多いのは、子どもの状況を受け入れられず親の思い通りに矯正しようとしてしまっているから。テストでいい点を取ったとしても「ここを〇〇していればもっと良い点が取れたのに」など悪い点を指摘してくるのが過干渉な親の傾向です。
なぜ親が過干渉になるのか
子どもの将来を心配するこは自然なことです。子どもが小さいうちは子どもに対して先回りをしてアドバイスや注意をしてしまうこともあるでしょう。しかし、子どもが大きくなって自分の意見を持って行動し始める際に、子どもの気持ちの成長についていけずに子離れできていない親が意見を押し付けたり行動を制限することで「過干渉」になっていきます。
親自身が「自分はこんな風に生きてきたからよかった」「自分の時はこんな風にしていたから後で役立った」という実体験や、「自分が〇〇ができなかったから子供にはやらせたい」「自分がもっと早く〇〇しておけばよかったと思ったから子どもに早期教育をさせたい」などコンプレックスに感じていることを子どもに押し付けてしまうことで、子どもの意見や希望を聞かずに親の考えの通りにコントロールしてしまうことで「過干渉」の状態に陥ってしまいます。
「過干渉」が子どもにもたらす悪影響
それでは、実際に過干渉は子どもにどのような悪影響をもたらすのでしょうか。
自分の判断で物事を決められなくなる
いつも親が選んでいたり、自分が選んだものを親に否定されたりしていると、自分で物事を決めることができなくなります。成長につれて学校や社会で自分の意見を持って行動することを求められた時に、自分で決められないと大事な場面で問題が出てくる可能性があります。
自己肯定感が低い
過干渉な親を持つ子どもは、適切な場面で褒められていないため、自己肯定感が低くなり自分に自信が持てなくなります。
また過干渉な親は子どもの希望するものが自分の価値観と合わない場合に否定をするため、子どもが自分の選択に自信が持てなくなります。
アイデンティティが確立できない
過干渉な親に育てられた子どもは、成人した後も自分が望むことなのか、親が望むことなのかよくわからずアイデンティティが確立できなくなりやすいと言われています。自分が何をしたいのか、自分が何者であるのかということがはっきりとわからず、無力感に襲われることがあるのです。
「過干渉な親」にならないために
子供には成長に合わせた保護と適切な見守りが必要です。過干渉にならないようにするために親として子どもにどのように接していくのが良いのでしょうか。年代別に見ていきましょう。
時期 | 接し方 | 接した結果 |
幼児期 | 子どもが望むことを叶えてあげる。 スキンシップなど子どもの要望を叶え安心感を与える。 しつけと自由の違いはしっかりと伝える。 | 満足感を得られ、自然と自立へ歩む |
児童期 小学生~ | 出来たことを褒める。 自分でできるようになったことは見守る。 親の意見を押し付けるのではなくアドバイスする。 | 人と関わり成長する |
思春期 中学生~ | 自分で考え決めたいという気持ちを尊重する。 子どもを信じて待つことで信頼関係を築く。 子どもの決めたことをすぐに否定せずに話を聞く。 悩んだり不安に感じている時は手助けをする。 | 自分で考え自立へ向けて歩む |
「過干渉」な親が悪影響なワケ まとめ
子どもへの「過保護」や適切な干渉は悪いことではなく、故・佐々木正美氏は「問題なのは怠惰な放任か過干渉で、過保護なことではありません」と述べています。
子どもが愛情や手助けを求めている時に放置・無視し(怠惰な放任)、望んでいない時に手を出すこと(過干渉)は子どもの成長に悪影響を与えます。子どもの意見や決定を尊重し、愛情を持って見守ることで、自分で主体的に考え行動し自立への道を歩んでいきます。
自立への芽を育てるために、親としてどのように関わるべきかを今一度考えたいですね。
【参考文献】
子どもが喜ぶことだけすればいい
子どもの心の育てかた
子育てのきほん
毒になる親 完全版
大人の育て方 ——子どもの自立心を育む方法 (フェニックスシリーズ No. 76)
尾木ママの「思春期の子どもと向き合う」すごいコツ (講談社文庫)